2019.07.09
MR(複合現実)を利用してハリケーンの危険性を訴える
防災に関する世界の取り組みを紹介していきます。
第5回はアメリカの気象情報番組による、MRを駆使した災害情報伝達を紹介します。
米国の気象番組であるThe Weather Channel(ウェザー・チャンネル)は、報道番組でのMRの活用を進めています。
ハリケーン上陸で危機が迫り来る
2018年6月、ノースカロライナ州に上陸した「ハリケーン・フローレンス」に関する放送で、その危機迫る映像が話題になりました。
ハリケーンの発生によって引き起こされる激しい雨や、時速110マイルにもなる強風。
沿岸部の劣化の影響もあり、ノースカロライナ州では大規模な洪水の可能性が懸念されていました。バージニア州とカロライナ州は、強制力の強い避難指示を出しているものの、最悪な状況下においては甚大な被害と死傷者が出ることは免れないことを予想。
大災害の危険性を把握できていない住民がいることも想定されるため、ウェザーチャンネルは没入型のMR技術を駆使し、沿岸南部の住人たちがどれくらいの被害がおよぶのか、リアリティある映像で報道しました。
リアルなMRで訴える被害の危険性
Unreal Engine 4で制作されたハリケーンのAR映像は臨場感溢れるものとなっており、リポーターはARのハリケーンの中から天気予報を伝えます。
洪水の深刻さや予想される水位、それに伴う損害などを、リポーターの解説に合わせてリアルタイムで反映しています。
叩きつける雨の音や風で倒れそうになる木々や電柱、水位が上昇して屋根の高さにまで浮かぶ自動車など、予想される被害映像が流れ、そのリアルさは視聴者に危機感を訴えます。
ウェザーチャンネルのデザイン担当Vice PresidentであるMichael Potts氏は、Webメディアのインタビューで「私たちの仕事は安全を確保することです。天気とは理屈ではなく物理的な現象であるので、可能な限り現実に近い方法で再現することを試みています。」と答えました。
MRが可能にする防災への呼びかけ
視聴者が今置かれている危険な状況をリアルな映像とともに伝えることで、「自分は大丈夫」という危機感の欠如意識を変えるきっかけになります。
今後もMR・AR・VRなどの先進技術を使ってよりわかりやすく視覚に訴えかける注意喚起を行うことで、手遅れになる前に避難の判断を促し防災に繋げることが可能となっていきそうです。
参考:https://mashable.com/article/weather-channel-hurricane-florence/